心臓・血管に優しい食生活とはどのようなものでしょうか。
心臓病の患者さんが気にしたい食生活には
1.適切なエネルギー摂取量で体重をコントロールすること
2.血管を硬くしないための食事をする
が挙げられます。
1.適切なエネルギー摂取量で体重をコントロールすること
人が適正体重を維持するために摂取すべき1日当たりのエネルギーを「適正エネルギー」といいます。適正エネルギーよりも多くエネルギーを摂取すれば太り、少なければ痩せていきます。
では、みなさん電卓を出してご自身のエネルギーの目標量を計算してみましょう。
エネルギー目標量=標準体重㎏×身体活動量kcal
※標準体重㎏の求め方=身長(m)×身長(m)×22
※身体活動量の目安
・軽労働(デスクワーカー、主婦など):25〜30kcal
・普通の労働(立ち仕事が多い職業):30〜35kcal
・重い労働(力仕事の多い職業 スポーツ選手):35kcal〜
いかがでしょうか?今計算したエネルギー量だけでは、なかなかどんな食事をしていいか分かりにくいですよね?
栄養素には三大栄養素があり、炭水化物・タンパク質・脂質で構成されます。この3つの栄養素はそれぞれ炭水化物50-55%・タンパク質15-20%・脂質20-25%に配分されることが推進されています。
例えば、適正エネルギー摂取量が1500kcalであれば炭水化物825kcal(206g,全エネルギーの55%)、タンパク質300kcal(75g, 全エネルギーの20%)、脂質375kcal(42g, 全エネルギーの25%)となります。
特に炭水化物(砂糖・果糖・アルコールを含む)の摂りすぎやエネルギー過剰で太っていく過程では、中性脂肪を高めます。通常、中性脂肪は体を動かすためのエネルギーの原料となりますが、余ったものは内臓脂肪や皮下脂肪に蓄えられます。その結果、脂肪が増えて体重が増えていきますので、炭水化物と脂質のコントロールを意識しましょう。
まずは、ご自身に合った食事の量、見た目や満腹感で確認してみましょう。
2.血管を硬くしないための食事をする
日本人は1日に10〜11gの塩分を摂取しています。心臓病の場合、塩分摂取量の目標は1日6g未満です。ちなみに世界保健機構(WHO)が推進している塩分摂取量は5g未満/日とされています。食塩から摂る塩分を減らしたり、ナトリウムを体の外に出しやすくしたりすることで血圧を下げます。
練り製品や肉加工品などの加工食品には私たちが感じるよりも塩分が多く含まれています。漬物には塩分が多く含まれています。特に二度漬けされている漬物(たくあんや梅干し)にはたくさんの塩分が含まれています。味噌汁やスープなどの汁物類は1日1杯程度にしましょう。そば、うどん、ラーメンなどの麺類も1日1杯までとし、塩分の多い汁は飲まないようにしましょう。
調味料にも多くの塩分が含まれており、しょうゆ(大さじ1)には2.7g、固形スープ(1個)には2.3g、ウスターソース(大さじ1)には1.6gもの塩分が含まれています。
塩分控えめの食事は美味しくないという人が少なくありませんが、ちょっとした工夫をすることで、美味しく減塩をすることができます。新鮮な食材には素材本来のおいしさがありますので薄味でも美味しく食べることができます。調味料は塩分の少なめのものを選び、かけるのではなく、少量を小皿にとって直接つけると量を減らすことができます。さらに、うま味、酸味、辛味や焼き香ばしさを活用することで塩分が少なくても味に深みやアクセントをつけることができます。
薄味でも食べ過ぎれば塩分の摂りすぎになるので気をつけましょう。
血液中の「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」や「中性脂肪」が増えると血管の硬化が進行しやすくなります。LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶ働きがあるため、食事に含まれる脂質の摂取を控えることで、血管が硬くなるのを防ぐことができます。特に、脂身の多い肉、皮付きの鶏肉やバター、卵黄などに含まれる、飽和脂肪酸の摂りすぎに注意しましょう。こんにゃく、ひじき、わかめといった【食物繊維】を多く含む食材、EPA・DHAを含む【青魚】、豆腐・厚揚げなどの【大豆製品】がLDLコレステロールを減らしてくれます。
いかがだったでしょうか。適正なカロリーは改めて見直しが必要な項目ではあります。しかし減塩や血管・血液の為の食事は、いつも食べている食材を頻度高く食べてみるなど、少し意識することで結果につながりますのでお試しください。
2023年7月
日本遠隔運動療法協会(JARET)
理学療法士・心臓リハビリテーション指導士 鈴木翔
監修:聖路加国際病院 栄養科 管理栄養士 松元紀子