心臓病の患者さんが気をつけたい日常生活の注意点についてです。
心臓を守りながら生活するためには食事や運動も大切ですが、毎日心臓のことを思いながら生活することも大切になります。心臓をいたわるということは、単に安静にするということではありません。心臓の病気をした=安静にしなければならない、と考えがちですが、適度な身体活動の負荷は心臓に良い影響を与えることができます。
特に
1.毎日の体の状態をチェックする
2.体に負担をかける動作時に注意する
3.心臓を休ませる時間を作る
これらを意識することで、心臓をいたわりながら生活をすることができます。
1.毎日体の状態をチェックする
一日を健やかに暮らすためには、まずは朝起きたらご自身の体がいつも通りかどうか、チェックしてみましょう。
・血圧、脈拍の測定
・体重の測定
・むくみの有無
・息切れの有無(特に夜間)
前日と比べて変化がある様な時は、いつもよりもペースを落として生活をしてみましょう。数日続いたり症状が増えたり、悪化するときには早期の受診が必要となります。
また、これらを毎日記録して、受診時に主治医の先生にみてもらうことで薬の調節にも役立ちます。
2.体に負担をかける動作時に注意する
過剰な身体の動作は、心拍数や血圧を急激に上げてしまうため、心臓にとって負担となります。同じ動作でも生活の仕方や動作を工夫することで、心臓の負担を下げることができます。日常生活では、排便や入浴、車の運転、寒暖差は、特に注意が必要です。
・排便:りきまない、我慢しないことが大切です。水分を摂る、お腹をマッサージする、食物繊維をとると便が柔らかくなります
・入浴:湯船に入る前には、シャワーを足元などの心臓の遠いところからかけて体を慣らします。湯船の温度は40℃に設定し、みぞおちまでつかるようにします。胸から上はお湯をかけるようにしましょう。入浴後は水分補給をしましょう。
・車の運転:運転することは差し支えありませんが、運転は自分自身が感じている以上にストレスがかかっています。長距離のドライブは避けて適度に休憩を入れたゆとりを持った運転を心がけましょう。混雑した道や高速道路、夜間の運転、悪天候や積雪、路面凍結時は運転を控えましょう。
・暑さ寒さへの対応:寒暖の差は心臓に大きな負担を与えます。脱着しやすい服装を心がけ、暑さや寒さに対応できるようにしましょう。日差しの強いところでは帽子や日傘を用いたり、冷房対策として靴下や掛け物を準備するなどの自衛をしましょう。外出前に気象情報をチェックして、寒い日や暑い日の外出はできる限り避けましょう。屋外での作業を行う際には夏は暑い時間を避け、涼しい夕方に行い、冬は天気が良く、風がない日に行うなどの工夫をしましょう。
3.心臓を休ませる時間を作る
心臓を休ませるためには、普段の睡眠が大切です。睡眠時間を確保して、良い睡眠を得るようにしましょう。このほかにも、体が疲れている時やストレスがかかったときは、心拍数や血圧が高くなっているため、休息をとりましょう。
・良い睡眠を得るためには
毎日、同じ時間に起きて同じ時間に寝る規則正しい生活を送り、日中は積極的に体を動かして生活にメリハリをつけることが大切です。就寝の1〜2時間前から部屋の明かりを落として眠りに入る態勢を整えます。テレビやパソコンの光は刺激になりますので就寝前は控えましょう。アロマセラピーやハーブティーを飲むなど、自分なりにリラックスできる方法を取り入れてみるのも良いです。
・心臓に負担がかかったなと思ったら
まずは、脈拍を確認してみましょう。いつもより速かったり強く脈を感じるときには心臓が頑張っている状態なので落ち着かせてあげましょう。脈とりながら深呼吸をします。息を吐くときに、軽く口をすぼめてゆっくり吐くようにします。このとき、いろいろなことを考えず、呼吸の秒数や脈の速さの変化を観察するようにしましょう。もし、眠気を感じるときは15分ほど仮眠を取ることもリフレッシュにつながります。
2023年6月
日本遠隔運動療法協会(JARET)
担当:理学療法士・心臓リハビリテーション指導士 鈴木翔
監修:聖路加国際大学 看護学部長・大学院看護学研究科教授 吉田俊子