体力を定義する5つの要素を紹介
新型コロナウイルス感染症の拡大により、免疫、体力など健康に関することがあらためて注目されるようになりました。特に、ご高齢の方や基礎疾患を持っている方においては体力を維持、向上させていくことはとても重要なことです。今回は「コロナに負けない身体づくり」のためにも、体力を定義する5つの要素について紹介していきます。
体力とは?
体力は、文部科学省の定義によると「運動をするための体力(行動体力)」と「健康に生活するための体力(防衛体力)」とに分けることができます。
体力測定で評価する瞬発力や調整力、持久力が行動体力にあたります。
一方、感染症などに対する抵抗力(免疫力)などが防衛体力にあたります。
私たちが健康的な生活を行うためにはこれら2つの体力が欠かせません。
身体的な面に加えて、気力、意欲、ストレスに対抗する精神的な強さもとても大切です。
体力の5つの要素
体力には5つの要素があるといわれています。
⓵全身持久力
②筋力
③バランス能力
④柔軟性
⑤敏しょう性
なかでも全身持久力と、筋力はフレイル(虚弱)を予防するためにもとても大切な要素です。
これら5つの体力要素について以下で詳しく説明します。
①全身持久力とは?
一定の強度の運動を一定時間以上続けることができる能力のことを全身持久力といいます。
別名、有酸素性能力とも呼ばれます。
全身持久力は加齢に伴い低下し、心疾患の発症や生命予後とも関連することが知られています。
全身持久力を維持、向上させることは、健康に生活を送ることに直結するため、日課として散歩を行い、活動的な生活を心がけることが重要です。
②筋力とは?
筋力とは、筋肉が収縮するときに生まれる力のことをいいます。
私たちが身体を動かしたり、日常の生活動作を行ったりするためには最も重要な要素の一つです。
筋力を向上させるには「筋力トレーニング」を行う必要があります。
筋力は年齢、性別に関わらず、適切にトレーニングを行うことで維持したり向上させたりすることが可能です。
目的に応じて正しいトレーニング方法を選択する必要があります。
③バランス能力とは?
バランス能力とはある姿勢を保つために必要な能力で、倒れずに静止していたり、動作の最中でも姿勢を保つために必要な能力です。
高齢者では転倒予防にとても重要な要素です。
バランス能力を向上させるためには、不安定な足元で姿勢をコントロールするトレーニングを行うと、バランス能力は改善します。
④柔軟性とは?
身体のしなやかさを表す能力です。
怪我の予防にも重要とされ、ストレッチなどで向上させることが可能です。
一流のスポーツ選手もけがの予防や高いパフォーマンスを発揮するために意識されている要素の一つです。
⑤敏しょう性体力とは?
敏捷性とは、身体の反応の速さで示します。
体力テストの反復横跳びなどで評価することが可能です。
敏しょう性は、一般的には加齢や病気などに伴い低下していきます。
体力と健康寿命
運動を行って、これらの5つの体力要素を維持・向上させることは健康寿命の延伸に極めて重要です。
例えば、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、体力をつけることで「メタボリックシンドロームを含めた循環器疾患・糖尿病・がんといった生活習慣病の発症及びこれらを原因として死亡に至るリスクや、加齢に伴うロコモティブシンドローム(運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態)及び認知症などを発症して生活機能低下を起こすリスクを下げることができる」とあります。
現在では、健康志向の高まりから、オンラインで自宅から参加できる運動プログラムも増えています。
新型コロナウイルス感染症により、あらためて注目された体力ですが、この機会にしっかりとご自身の体力について向き合ってみてはいかがでしょうか。
2023年4月
日本遠隔運動療法協会(JARET)
担当:理学療法士・心臓リハビリテーション指導士 大世渡渉
監修:順天堂大学保健医療学部理学療法学科教授 高橋哲也