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知識の杜

レジスタンストレーニングの重要性

レジスタンストレーニングとはいわゆる筋力トレーニングのことを意味しています

 

心臓病の患者さんがレジスタンストレーニングを行うと心臓を悪くしてしまいそうな気がしますが最近の研究では、心臓病の患者さんでも適切なレジスタンストレーニングを行い、全身の筋肉をしっかりさせることで心臓を守り、長生きすることができることが分かってきています。

 

レジスタンストレーニングの効果【筋力向上】・【筋肉量増加】

 

レジスタンストレーニングの効果には【筋力向上】【筋肉量増加】などが挙げられます。【筋力】が向上することで、立ったり歩いたりすることが容易になり、日常生活がスムースに送れるようになります。また関節の保護や転倒の予防にもよい影響があります。【筋肉量】が増えることで基礎代謝が向上し、糖や脂質を燃やしやすい身体となります。筋肉の中にあるミトコンドリア(筋肉を動かすためのエネルギーの生産器官)も増えて運動能力が向上します。

ここ数年注目されている「サルコペニア」は加齢性筋肉減少症とも呼ばれ、筋肉量の減少を診断基準の一つとしています。筋肉量が少ないことで転倒、骨折、さらには寝たきりになるリスクが高まります。病気を持たれている方がサルコペニアを合併すると、死亡率や再入院率も高くなります。

脚を伸ばす筋力(膝伸展筋力)を体重で割った値を体重指示指数(図-1)と呼び、膝伸展筋力が体重の60%以上あると日常生活動作を不自由なく過ごすことができるといわれています。逆に40%を下回ってしまうと杖などの補助具が必要になるといわれています。

<レジスタンストレーニングが心臓に良い理由>

 

筋肉が収縮すると周囲の血管を圧迫し、血液を心臓に送り返すポンプのようなはたらきをします。そのため、特に心臓より下にある脚の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、心臓の機能が低下した方にとっては、心臓まで血液を送り返してくれる筋肉は、必要な血液の循環を保つために極めて重要です。

心臓病の人でも症状が十分に安定した後に、注意しながらレジスタンストレーニングを行い筋肉を良好な状態に保つことで、血液循環を維持することができ、起立性低血圧(立ちくらみ・ふらつき)を予防し、運動能力を維持することができるといわれています。

心臓の負担を減らすために、専門家の指導のもと、適切なレジスタンストレーニングを行いましょう。

レジスタンストレーニングを行う際には【種類】【強度】【回数】【頻度】の4つのポイントを押さえて行いましょう。

【種類】にはマシントレーニングや自重トレーニング、ゴムチューブを利用したトレーニングがあります。マシントレーニングはスポーツジムなどにある大型の機械で行います。自重トレーニングは自分の身体の重みを使ってトレーニングするものです。自宅でトレーニングを行うには自重トレーニングやチューブトレーニングがおすすめです。

【強度】は弱すぎると効果はありませんし、強すぎると過剰な負荷になって関節を痛めたり、心臓への負担が大きすぎて危険です。目安としては10〜15回運動をして疲労を少し感じる程度がよいでしょう。

【回数】は1セット10〜15回とし、3セット行います。

【頻度】は週2〜3回行います。理想としては1日置きに行います。レジスタンストレーニングを行うことで筋線維が少し傷がつくといわれており、ある程度回復させてから行うことでより効果的なトレーニングになります。

運動前にはトレーニングができる状態か確認をする必要があります。
いつもと比べて、血圧が高かったり脈拍が速くないか、脚の浮腫みが強くなっていないか、体重が増えていないか、運動前から息切れがないかなど、心不全症状の有無の確認します。また、食事をして薬を飲んで1時間ほど経ってからトレーニングを行うようにするとよいでしょう。

 

また、レジスタンストレーニングを行ってはいけない状態として、以下の項目が挙げられます。
・安静時から狭心症状や心不全の症状がある
・コントロールされていない不整脈がある
・収縮期血圧が180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上の高血圧がある
・糖尿病で重度の網膜症(活動性増殖性網膜症)がある
・重度の大動脈弁狭窄症がある

レジスタンストレーニングは有酸素運動よりも負荷の高い運動です。より安全に行うためにも、最初から高い負荷で行うのではなく、徐々に負荷を上げていくことが望まれます。さらに安全に行うために、医師の運動処方や専門家の指導のもとトレーニングを行うことが重要です。

2023年4月
日本遠隔運動療法協会(JARET)
担当:理学療法士・心臓リハビリテーション指導士 鈴木翔
監修:順天堂大学保健医療学部理学療法学科教授 高橋哲也